日下部一郎

一郎くんです。
日下部一郎くん。

「ねおん」 という名で出ています。

ねおんくんは、しゃべりません。
しゃべれるけれども、しゃべりません。

富岡さんが高校生のころ、言葉についての疑問を持った記憶から生まれました。
少女のころに、いま自分が思っていることを伝えたいのに、うまく言えない。
ぴったりくる言葉が見つからなくて、しゃべるほどにどんどん自分のなかにある
感覚とかけ離れていく。
という、 もどかしさ。
それ、ある。
たぶん、いろんな人が感じたことがあるはず、とワタクシは思うのです。
その相談をどうやら富岡少女は学校の先生に相談したそうでございます。
本を読んで言葉を増やしていくと解消されていくだろう、
という答えをもらった富岡少女。
でもたぶん、それは答えにはならない。
どれだけ言葉を尽くしても、言葉で捕らえられないものが、たぶん、
心のなかにうずまいているだろうから。
そういう富岡少女をもとに、ねおんがいるのでございます。

そんなねおんくんの一郎くん。
「ねおん」くんにぴったりの男子はどこかにいるのかしら。
と、富岡さんと相談しておりましたところ、

「……います!」

一郎くんは、最年少。
23歳だったかしら。
若いはずなのに、じつはあんまり若者らしくない。
落ち着いている、というわけでもなく。
老成している、というわけでもない。

一郎くんはすらりと伸びた一枚の緑。
草食系という言葉がありましたが、
系ではございません。
もう、草です。
草そのものです。
でもそれは生命の緑一枚です。

草食系を超えて、草の一郎くんは鮮やかな光の緑でございますが、
その緑は実はちょっと毒を持っている。
素肌に触れると赤く腫れあがる毒。
一郎くんの内側には、いつも話している100倍くらいの言葉があるのです。
言葉が内側でうずまく、というのが、ぴったりです。
 いんや、若者らしくないというか、もしかしたら最も若者らしいのかもしれない。
出稼ぎする若者、みたいな感じでしょうか。

初めから終わりまで、「ねおん」は言葉を発しません。
だから一郎くんはひたすら見つめます。
ぐっと見つめる。
さらりと見つめる。
呆然と立ち尽くす。
その佇まいが、語らない姿が、
雄弁になっていきます。


一郎くんの名言は、男性の象徴のことを、

「なんだろうと思いますよ。こんなところにこんなんぶらさげて。キーホルダーかよって」

と言ったこと。
キーホルダーて……

コメント