シュッと、マッチのこすれる音。
火薬の匂いがする。
さきほどの若い男が、ランプに火を灯す。
風が吹いても消されることがないような、
しっかりしたランプ。
若い男はぐるりと空間を見た。
そこに。
寝台がひとつ。
その上に、真白な布に包まれたものが横たわっている。
若い男がそれをじっと見ている。
やがて、若い男はその真白な布をはらりと解いた。
「なに見てるんや」
若い男は息を詰める。
「なに見てるんや」
若い男は一度、ごくんと咽を鳴らした。
ランプの灯り。
目を凝らしてみる。
うっすらと、見える。
寝台の上には涅槃の男。
くっちゃくっちゃと、何かを噛んでいるような
不愉快な口の音。
「なに見てるんや、ちゅうてんねん」
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