耳に飛び込む町の声

電信柱に、しがみつく初老の男。
じっと動かない。
信号は何度も赤、青、赤、青を繰り返す。

自転車でゆるりと横を通り過ぎる。
その初老の男の傍に、西成警察官二名。
通り過ぎるときに耳に飛び込んで来たのは、
初老の男の祈るような言葉。

「黒澤映画がぁぁぁぁぁ…………」

警察官は、受け止める。
「そうか、黒澤が好きなんやな…」

ナンの話でございましょうか。

梅南の夜は更けてゆくのでございます。

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